8.中枢性頭位めまい

(Positional vertigo of central origin)

1.疾患概念

 頭位や体位を変化すると激しい回転性のめまいが誘発されるが,頭位眼振に減衰現象が少なく,検査を反復すると常に再現される。眼振の性状は純回旋性ではなく垂直性である。Bruns(1902)はこのような症候を示す脳腫瘍を報告し,後に Alpers と Jaskin(1944)も報告している。Kornhuber(1958)や Sakata(1971)は小脳虫部を中心とする出血例の慢性期において懸垂頭位をとる時激しい回転性のめまい発作が誘発されると共に下眼瞼向き垂直性眼振が認められることを報告し,急性小脳虫部症候と名づけた。これらの症例には頸椎,前庭系の障害を認めず,小脳症状も認められなかった。Sakata(1971)は Bruns(1902)の発表した Bruns 症候群,急性小脳虫部症候群に認められるめまい発作が同一の発現機構によるものとして,悪性発作性頭位眩暈の名称をつけた。

2.病歴からの診断

 空間における一定の頭位,体位の変化によって発作的にめまい発作,気持ちが悪くなる,目が動く,視線が定まらない,対象物が動いて見える(水平方向,垂直方向に)。これらの患者の中には僅かながら小脳症状,脳圧亢進症状等を示す者,大後頭孔付近の障害にあっては手,腕の運動,知覚障害を訴える者も散見されるが,大部分は頭位変化によって発来する症状以外無症状の場合が多い。

3.検査からの診断

 フレンツェル眼鏡で一定の頭位,頭位変換検査で次のような眼振を認める。

1)眼振出現まで潜時がない場合が多い。
2)眼振は同一頭位にしておくと減衰性が少なくいつまでも持続する。
3)眼振にはめまい感,悪心,嘔吐等の自律神経症状を伴うことが少なく,あっても軽度である。
4)眼振の性状は下眼瞼向きの場合が多い。
5)反復検査で減衰性,疲労性が殆どない。
6)他の ENG 所見,即ち注視眼振,視標追跡検査,OKN,温度性眼振への固視抑制の低下・消失,明所での特異な自発眼振(上・下眼瞼向き)等を認める事はあるが,温度性眼振の反応低下を示す事はない。
7)めまいと直接関係する聴力障害を伴う事はない。

4.予後判定基準

 神経症候学的,放射線学的に原疾患を把えられたものは予後は原疾患による。把えられないものは色々な薬物療法をして行く中に症状が消退していくものが多い

文献

1)Bruns H : Neuropathologishe Demonstrationen. Neurol Zentralbl 21 : 561-571, 1902
2)Alpers BJ, Jaskin HE : The Bruns syndrome. J Nerv & Ment Dis 100 : 115, 1944
3)Kornhuber HH : Das akute Unterwurm-syndrom beim Menschen. Ungarischer HNO-Sektions-Versamml Budapest 10 : 24, 1958
4)Sakata E : Das neurootologische Studium uber die Lasion des Kleinwurms. Equilibrium Res Suppl 1 : 30-48, 1971
5)長島親男:中枢性頭位眩暈-Bruns 症候群.脳と神経28:1248-1249,1976