4.めまいを伴う突発性難聴

(Sudden deafness with vertigo)

1.疾患概念

 厚生省調査研究班のまとめた診断基準に基づく“突発性難聴”の約40%にめまいを伴う例がある。めまいを伴う例と伴わない例とで,病因が異なるか否かは不明である。ここでは,めまいを伴う突発性難聴について記す。

2.病歴からの診断

1)聴覚症状
@ 突然に高度の難聴が発生する。文字通り即時的な場合もあるが,朝,目がさめて難聴に気付く例もある(但し,これが就寝中に突発的に起こったのか,ある程度の時間がかかったかは不明である)。
A 難聴は一側性の場合が多いが,両側例もある。
B 難聴の原因が不明である(原因が不確実なものも含む)。すなわち,当時カゼ気味であったという例や,ウイルス感染を疑わせる例などがあるが,難聴と因果関係が明瞭でないものを全て含める。
C 耳鳴が難聴の発生と同時又は前後して生じる例が多い。

2)前庭症状
 めまい(嘔気,嘔吐を伴うことがある)が,難聴の発生と同時又は前後して生じるが,めまい発作を繰り返すことは無い。難聴の前又は同時に起こるめまいは回転感が多く,後に起こるめまいは動揺感又は浮動感が多い。

3)その他の神経症状
第8脳神経以外に顕著な神経症状を伴うことは無い。

3.検査からの診断

1)難聴は高度の感音性難聴である。音の大きさの補充現象(recruitment)の有無は一定しない。経過中,聴力の改善悪化の繰り返しは無い。
2)自発又は頭位眼振を難聴発生時に認めることが多い。この眼振はごく早期に患側の方へ向かい,その後反対側方向に変わり,やがて消失することが多い。
3)温度眼振検査では一般に患側の反応低下(CP)を認める。
4)X線検査で器質的異常を認めない。

4.鑑別診断

1)メニエール病
“めまい発作の反復性の有無”や“glycerol test, ECoch-G 所見”等を参考にする(但し,突発性難聴の中に glycerol test 陽性を示す例がある)。
2)聴神経腫瘍
“CT 所見”,“ABR 所見”,“視運動性眼振所見”等が有用である。。

5.病期の判定

 回転中眼振検査で経過を観察すると,ごく早期に患側へ向かう眼振方向優位性を認め,その後は健側へ向かう眼振方向優位性を認めるようになる。前者は患側迷路の興奮期。後者は麻痺期に相当する。但し,難聴の回復期に,再び眼振方向優位性が健側から患側へ変わることがある。一般に,温度性眼振の CP は存続することが多いが,回転中眼振の左右差は中枢の代償又は迷路病態の回復により早晩消失する。

6.予後の判定

 一般に早期に治療を開始したもの程,難聴の回復する可能性がある。但し,めまいを伴う例はめまいを伴わない例より難聴に対する予後は悪い。めまい発作は一回限りであり,其の後,暫く浮動感が続くこともあるが,早晩消失する。若し,自発又は頭位眼振が長期に亘って持続する場合は中枢疾患を考えねばならない。

7.疾患についての説明

 突発性難聴は一つの独立した疾患と考えるより,突然,原因不明の高度の難聴が発来する疾患群と考えた方が妥当と思われる。従って,病因も血行障害説,正円窓膜破裂説,ウイルス説等,区々である。何れにしても,他の類似疾患と正しく鑑別診断し,早期に治療を開始することが大切である。

文献

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